日ラトビア友好100周年を迎えて

令和3年2月23日
 本日、天皇陛下は、61歳の誕生日をお迎えになられました。誠におめでとうございます。在ラトビア共和国日本大使館一同、心よりお慶び申し上げます。

 さて私が、当地に着任して、二年あまりが経ちました。一 年目にあたる2019年は,ムールニエツェ国会議長,レヴィッツ大統領夫妻、ネミロ経済大臣をはじめ,ラトビアの要人が多数日本を訪問し,また,日本からも,日本旅行業協会,日本経済団体連合会といった大型の訪問団のラトビア来訪が実現しました。さらに,2018 年の安倍総理のバルト三国訪問によってはじまった「日バルト協力対話」の第2 回会合が首都リガで成功裏に開催されるなど,大変活発な往来のあった年でした。
 一方、この一年は、新型コロナウイルスの脅威にさらされ、大変厳しい年となりました。春、ラトビアは、いち早く、外国との出入国を制限することを決断する一方、国内においては2+2ルールを中心とした緩やかな措置を導入することで、感染者を抑えました。秋から感染が拡大する中、両国で、次々と厳しい措置が導入され、人々の往来、大使館の活動のいずれにおいても大変大きな制約を受けることとなりました。
 それにもかかわらず、この1年間にも、日本とラトビアの関係は発展を続けることができました。

 まず初めに、政治的な面では、両国は、多国間主義及び基本的人権に重点を置き、また、法の支配に基づいて自由で開かれた秩序を維持することが重要であるという考え方を共有しつつ、国際社会における様々な問題に協力して取り組んできました。
 11月に行われた安全保障に関する国際会議であるリガ会議には、日本から、中山泰秀防衛副大臣に出席いただき、「自由で開かれたインド太平洋」構想についてご紹介いただきました。
 今年の1月26日には、ラトビア共和国が法律上の国家承認100周年記念を迎えました。当日朝は、大統領公邸に国家承認を与えたフランス,英国,イタリア,ベルギーそして日本の5か国の国旗が掲揚され、大使が招待されました。100年前のちょうどこの日、この5か国の代表からなるSupreme Council of Allied Powersが、ラトビアに初めて法律上の国家承認を与えたという歴史的事実の重みを改めて認識する機会となりました。
 記念式典には、菅義偉内閣総理大臣から、ビデオメッセージをいただきました。菅総理は、「日本とラトビアの絆は着実に強くなってきました。ラトビアは、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する重要なパートナーです。100周年を契機に、私は、日本とラトビアの関係を更なる高みに押し上げていく考えです。新型コロナウイルス感染症を乗り越え、両国の交流を一層進展させたいと思っています。」と述べられました。

 次に、経済面では、日本からラトビアへの投資において大きな進展がありました。昨年4月、日本の企業が出資するファンドが、ラトビア政府の承認を得て、ラトビアで最も重要なエレルギー関連インフラである天然ガス貯蔵庫とガスのパイプラインを所有するConexus Baltic Grid社の29.06%の株式を取得しました。これは二国間の歴史において非常に大きな出来事であり、日本の企業の皆様が、これをきっかけに広くラトビアへの投資に関心を持っていただくことを期待しています。
 「グリーン」と「デジタル」を次の経済成長の原動力にしていくという点において、日本とラトビアは、同じ方針を共有しています。
 「グリーン」では、菅総理は、昨年秋には、温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロとし、脱炭素社会を実現すると宣言しました。「デジタル」では、ラトビアは、一昨年7月に、5Gの商用利用を開始しており、欧州の中でも5G普及に最も積極的な国の一つです。昨年11月には、5Gに関連する欧州最大のフォーラムの一つである5G TECHRITORYが、ラトビアで開催され、日本の政府関係者、民間企業からも出席いただきました。

 さらに、文化面では、昨年2月から8月にかけて、歌舞伎を題材とした浮世絵の展示会が、ラトビア国立証券取引所美術館にて開催され、続いてリエパヤ美術館でも9月まで開催されました。展示された浮世絵は、ラトビア国立証券取引所美術館が所蔵しているもので、長きにわたる日本とラトビアの友好の歴史を象徴するものです。7月24日には、エギルス・レヴィッツ大統領ご夫妻を同展にお迎えし、浮世絵を鑑賞いただきました。
 11月には、音楽を通じた両国間の交流促進に感謝の意を表し、ラトビアの国民的音楽家であり、「百万本のバラ」の作曲者として名高いライモンズ・パウルス氏へ、旭日中綬章を授与することが決定され、ラトビアの人々の高い関心を呼びました。
 
 この一年を通して見ますと、ラトビア共和国が法律上の国家承認100周年を迎えたこと、そこで両国の関係を確認したことが最大のハイライトとなりました。100年前の国家承認に尽力された方々に対して、深く敬意を表するとともに、ラトビア共和国の一層の平和と繁栄をお祈り申し上げたいと思います。
 日本とラトビアは、本年を「日ラトビア友好100周年」とすることといたしました。基本的価値と理念を共有する両国は、様々な困難を乗り越えて、両国の友好関係を発展させてきました。本年が、両国の関係を一層進める重要な年となることを祈念するとともに、今後とも皆様の変わらぬご支援とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
 
駐ラトビア共和国駐箚特命全権大使
川口康裕