ラトビアの結婚式

平成28年7月20日
【海辺に挙式会場をセット】
【2人の証人が付き添って挙式開始】
 春になると,ラトビア全土で結婚式シーズンが始まり,新郎新婦とその家族や友人たちの姿をいろいろな場所で見かけるようになります。ラトビアでは2013年に婚姻登録の制度が新しくなりましたが,ラトビアの結婚式は実際にどのように行われるのでしょうか。昨年夏に結婚したばかりのラトビア人カップルを取材しました。

●海辺での挙式
 ラトビアではこれまで,婚姻登録と挙式は各地域の戸籍登録所または教会のみで行われていましたが,2013年より,登録所の職員の派遣を申し込むことで,ホテル,レストラン,宮殿,庭園など,自由に場所が選べるようになりました。婚姻登録費用は14ユーロと法律で定められていますが,登録所の派遣サービスを申し込む場合は別途料金がかかります(リガ市内の登録所の場合は1時間あたり150ユーロ)。近年は,挙式と披露宴を同時に行えるようなスペースがあって,宿泊設備も整っているような場所の人気が高まっているそうです。
 今のところ,登録所内や教会で従来通りの挙式を行うカップルが大半ですが,今回の新郎新婦は新しいスタイルでの結婚式を企画し,海辺の宿泊施設の敷地内に挙式会場をセットしました。挙式では,婚姻届への署名のほか,誓いの言葉や指輪の交換など日本でもお馴染みのやりとりがあり,その後,各ゲストが花束やプレゼントを贈呈します。ラトビアの結婚式では通常,新郎新婦の兄弟や親しい友人などが1人ずつ「証人」として夫婦に常に付き添い,婚姻届に一緒に署名を行うほか,ゲストの案内役や介添人としての役割も務めます。挙式後はシャンパンと軽食が振る舞われます。
 
【今回のカップルは挙式前にも様々な場所で記念撮影】
【今回のカップルは挙式前にも様々な場所で記念撮影】
●長~い写真撮影会
 ラトビア人は一般的に写真撮影が大好きです。結婚式もその例外でなく,挙式が始まる前から様々な写真の撮影が行われます。また,挙式後から披露宴までの間も,いろいろな場所で写真や映像の撮影を行います。この間ゲストたちは,ときには数時間も続く撮影会に参加する場合もあれば,ゲストだけでスナックやドリンクを手に歓談する場合もあります。
 写真撮影の合間に,新郎新婦がゲストたちの前でアトラクションを行うこともあります。代表的なものとしては,夫婦がお皿を割ってその破片の数で将来の子どもや孫の数を占ったり,幸運のお守りとされる蹄鉄の飾りを作ったりする習慣があります。また,ラトビアでは,新郎新婦で7つの橋を渡ると幸せが訪れるという言い伝えがあります。新郎が新婦を抱き上げてその橋を渡り,その時間が長ければ長いほど夫婦として一緒に過ごす時間が長くなると言われているため,橋を渡っている間にゲストがかけ声をかけながら時間を測ることもあります。橋に南京錠をつけ,その鍵を川に投げ入れて永遠の愛を誓うカップルも多く,ラトビアでは様々な橋に南京錠がつけられている様子を目にすることができます。
 
【披露宴会場となったテントとMC(右)】
【新郎新婦のダンス】
●MCとDJ必須の披露宴
 挙式後の写真撮影会が終わると,夕方頃から披露宴が開始されます。今回は,挙式場と同じ敷地内に設置された大型テントが披露宴会場となりました。
 ここで活躍するのがMC,DJ,音楽バンドなどです。ラトビアではゲスト参加型の披露宴が主流となっており,MCが中心となって,大音量の音楽をバックに様々なクイズやゲームなどが行われますが,これこそがラトビアの結婚式最大の特徴です。ときには新郎新婦も交えて,老若男女関係なく皆が様々なゲームに参加します。その内容は,障害物競走,風船ふくらまし競争,早食い・早飲み競争など,新郎新婦とMCのアイデア次第で何でもあります。ゲームの合間に各ゲストから乾杯の挨拶があり,その都度皆でお酒を飲み,踊ります。新郎新婦は,この日のために特訓したダンスを披露してくれました。
 
●深夜12時のケーキカット
 「夫婦初めての共同作業」としてお馴染みのケーキカットは,ラトビアでは通常,深夜12時を回ってから行われます。これは,真夜中に初めて真の夫婦になると考えられているためで,新しい家族になった証として,新婦はベールを脱ぎ,新郎はブローチをはずします。
 一連の行事が終わった後は,朝までダンス大会が続きます。新郎新婦は仲の良い友人たちに囲まれながら踊り,歌い,語り合いながら飲み明かすのがラトビア流です。披露宴の翌日は,別の場所でバーベキューをしたり,海に泳ぎに行ったりと,ときには結婚式が3日間続くこともあるそうです。
 日本人が初めてラトビアの結婚式に参加すると,その長さに驚くことでしょうが,歌と踊りが大好きなラトビア人にとってはあっという間の出来事なのかもしれません。今回,ラトビアらしい結婚式を取材させてくれた新婚夫婦の末永い幸せを祈るばかりです。

取材協力:
ラトビア法務省(https://www.tm.gov.lv/en),SIA “Kāzu Aģentūra” (http://www.milestiba.lv/en/)